
ミツユビハコガメ(学名:Terrapene carolina triunguis)は、北米に生息するハコガメの亜種のひとつで、愛嬌のある姿とユニークな生態からペットとしても人気がある陸棲のカメです。日本では流通量が限られていますが、その希少性や飼育の面白さから爬虫類ファンに注目されています。
ミツユビハコガメの特徴
名前の「ミツユビ」は、後ろ足の指が3本しかないことに由来します。体長は最大で15cmほどと小型で、手頃なサイズ感も魅力のひとつです。背甲は丸みを帯びたドーム型で、黄褐色からオリーブ色を基調とし、個体によっては赤やオレンジの模様が鮮やかに入ります。
大きな特徴として「甲羅を閉じることができる」点が挙げられます。腹甲にヒンジ構造を持ち、頭や四肢を完全に甲羅の中に収納して外敵から身を守ることが可能です。この能力から「ハコガメ(Box Turtle)」と呼ばれています。
野生下では森林や湿地帯に生息し、半日陰のジメジメした環境を好みます。雑食性で昆虫やミミズ、小型の無脊椎動物、果実や植物など幅広く食べるため、飼育下でも多様な餌を必要とします。
飼育環境
ミツユビハコガメは陸棲傾向が強いですが、水浴びを好むため、水入れは必ず設置しましょう。浅めで全身が浸かれる程度の容器を用意すると、体温調整や水分補給に役立ちます。
飼育ケージは幅よりも奥行きがあり、床材を敷いて潜れる環境を整えるのが理想です。ヤシガラ土や腐葉土、ミズゴケを組み合わせると保湿性も確保できます。日陰と日向を作るためにバスキングライトを設置し、甲羅干しの場所を用意します。温度は日中で26〜30℃、バスキングスポットは32℃前後、夜間は22℃程度まで下げるのが目安です。
湿度は60〜80%を維持すると快適に過ごせます。乾燥しすぎると甲羅の形成不全や体調不良の原因となるため、霧吹きで加湿したり、水分を含んだ床材を利用することが大切です。
餌と栄養管理
雑食性のため、バランスよく動物性・植物性の餌を与えることが求められます。昆虫類(コオロギ、ミルワーム、デュビアなど)やミミズを中心に、タンパク源をしっかり確保しましょう。また、イチゴやバナナ、ブドウなど果物を副食として与えると喜びます。野菜では葉物(小松菜、チンゲン菜、タンポポの葉など)が適しています。
ただし糖分の多い果物を与えすぎると肥満や消化不良の原因となります。カルシウム剤やビタミンD3を定期的に添加し、甲羅の形成不全やくる病を予防することも重要です。
性格とハンドリング
ミツユビハコガメは基本的におとなしい性格をしていますが、個体差があります。環境に慣れるまでは隠れたり警戒したりすることが多いため、無理に触らず、自然に餌を食べるようになってから少しずつ慣らしていきましょう。
ハンドリングは短時間で優しく行うことがポイントです。強く掴んだり甲羅を無理に開けようとするとストレスやケガの原因になります。甲羅に閉じこもってしまう場合は、静かに元の環境に戻してあげましょう。
繁殖
飼育下での繁殖も可能で、春から夏にかけて交尾し、メスは数個の卵を地面に産みます。孵化には約2か月前後かかり、温度や湿度管理が成功の鍵となります。ただし国内では繁殖個体が限られており、CB(飼育下繁殖個体)の流通はまだ少ないのが現状です。
飼育の注意点
ミツユビハコガメは決して丈夫な種類ではなく、環境の乱れに敏感です。とくに乾燥と高温には弱く、日本の夏場は熱中症になりやすいため注意が必要です。また、野生個体の輸入に依存してきた背景もあるため、できる限りCB個体を選び、責任を持って長期飼育を目指しましょう。寿命は30年以上ともいわれ、終生飼育の覚悟が必要です。
まとめ
ミツユビハコガメは、その小さな体と独特の見た目、そしてユーモラスな仕草で飼育者を魅了する存在です。一方で、温度や湿度管理、バランスの取れた食餌など繊細なケアが求められるため、初心者には少し難易度が高いかもしれません。しかし、正しい環境を整えれば長寿であり、何十年にもわたってパートナーとして共に過ごすことができるカメです。じっくりと向き合い、その魅力を味わってみてはいかがでしょうか。